2016年度第2回TAPの会報告

8月5日(金)、2016年度第2回TAPの会が開かれました。

前半は、関根彩先生が、認知行動療法が有効であった回避・制限性食物摂取症例について発表しました。この例は、根底に自閉症スペクトラム障害があることが判明したことが、有効な治療法の選択につながったと考えられました。
そして、特別講演で、医療法人mHI市橋クリニックの市橋秀夫先生より、「成人期自閉症スペクトラム障害の診断と治療」というタイトルでご講演をいただきました。先生のご専門である精神病理学的アプローチからASDの本質とそれらを念頭に置いた治療法について解説いただき、腑に落ちるところがたくさんあり、ASDについてこれまでもやもやしていた部分がかなりすっきりしたように感じました。
まず、中心症状は、入力の障害であり、それが出力の障害を引き起こしているとのことでした。先生は、この入力の障害を、「発達性失認」と表現され、失認の領域として、①話し言葉の理解、②メタコミュニケーションの理解、③状況意味の3つの領域を挙げて説明されましたが、ASDの症状を非常に理解しやすいと思いました。その他の基本症状として、同一性保持の傾向(固執傾向)、思い浮かべることの困難(イマジネーションの障害)、優れた視覚領域の記憶、知覚過敏を挙げて、各々わかりやすく解説して下さいました。DSMにおける症状の羅列ではイメージがわきにくく(と先生もおっしゃいました)、このように障害の本質は何かということを精神病理学的に理解することがより効果的な治療や支援につながるとの意を強くしました。